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叔父が白血病になった日

叔父白血病アイキャッチ

半年前に姪っ子が生まれて、自分自身が叔父になった苦労詐欺だ。
僕は小学校高学年になるまで自分に叔父がいることを知らなかった。

その理由は簡単で、親父が叔父とものすごい仲が悪かったから。
そんな叔父が白血病になるまでの話をしようと思う。

 

仲の悪い兄弟

兄弟喧嘩

うちの親父と叔父は仲が悪かった。
それは、子供の頃からのことで、男兄弟の間ではありがちなことだった。

叔父は昔からどうしようもない人で、一時期ヤンキーになっていた時期まであったらしい。
親父はそんな叔父にいろいろと引っ張りまわされ苦労したらしい。

歳が3つ程離れていることもあって、力では勝てず、叔父のいいようにやられてたらしい。
兄弟喧嘩は絶えず、祖父も祖母も手に負えなかったらしい。

ある年の正月、親父が両親(僕の祖父母)と自宅でお雑煮を食べていると、そこに電話がかかってきた。
祖父は親父に「○○(叔父の名前)が他校の塀にバイクで突っ込んだらしい。迎えに行ってくる」と言って、祖母と共に叔父を迎えにいったらしい。

親父は呆れ顔で「わかった。」と祖父母を送り出した。
結局親父はその日、一人でお雑煮を食べて3人の帰りを待ったらしい。

悪魔の兄弟

悪魔

祖父の仕事は転勤の多い忙しい仕事だったらしい。
祖母も何かしらで忙しくなるらしく、学校がある時はよかったが、夏休みや冬休みになると叔父と親父は度々親戚の家に預けられていた。

叔父も親父も親戚の家だとか関係なく、喧嘩はするわ暴れるわで迷惑をかけまくってたらしい。
そんなんだから、親戚でもたらい回しにされて、挙げ句の果てには親戚中から「悪魔の兄弟」と呼ばれるようになった。

祖母はなかなか二人を預かってもらえないからいろいろと苦労したみたい。
悪魔の兄弟は喧嘩して、暴れるたびに色んな人に怒られたんだとか。

そんな親戚から嫌われていた悪魔の兄弟も育ち、叔父は運送業者で働きだし、親父は名古屋の大学に進学した。
親父はこの時期からパチンコにはまりだしたらしく、祖父母からの仕送りをパチンコに使ってしまい困ったことがあったらしい。

最終手段で叔父に相談した所、手紙と共に自分のところに5万円が送られてきたらしい。
手紙に「これで美味しいものでも食べてくれ」と書かれていたんだとか。

弟が兄に勝った日

勝った

親父は大学に入ってからアメリカンフットボール部に所属し、身体を鍛えて徐々に筋肉がついていったそうだ。
それまでは細身だったらしいのだが、ポジションがライン(壁役みたいなもの)になったので鍛えるようになったらしい。

叔父は高校卒業後、東京に住み始めて、トラックの仕事で生活費を稼いでいた。
家は東京にあるが、仕事で各地にトラックで行くようになったみたい。

そんな叔父と親父だが、ある日、九州の実家に2人と戻ってきて、久々に家族4人で食事をすることになった。
最初は静かに4人でラーメンを食べていたのだが、ひょんなことから叔父が親父を子供扱いしてからかった。

あたまにきた親父は食べていたラーメンを叔父の頭の上からかけてしまった。
叔父は親父に掴みかかったが、身体を鍛えており力がついていた親父にはまったく勝てなかった。

見かねた祖父は喧嘩を止めて、叔父を家の外に連れ出した。
祖父はそのまま叔父を連れておでん屋に行き「そんなこともある」と慰めたんだそうだ。

僕が叔父を認識した日

ビックリ

これだけ叔父と親父は仲が悪かったためか、親父は叔父の話を家では一切しなかった。
だから、僕は自分が小学校6年生になるまで、叔父の存在を一切知らなかった。

小学校6年生のある日、友達の家から自宅に帰ってくると、いつも開いているはずの物置部屋の扉が閉まっていて、人の気配がした。
はじめは「親父の仕事関係の人でも来て、何か相談してるのかな?」ぐらいにしか思っていなかった。

数時間後、親父は物置部屋から男の人と一緒に出てきて、僕らに叔父を紹介した。

俺の兄貴でお前らの叔父だ。

この時初めて、自分に叔父がいることを認識した。
叔父曰く、僕が生まれたてぐらいの頃に一度会っているらしいのだが、まぁ、明らかに覚えているわけないよね。

叔父は仕事の都合で名古屋に来たのだが、宿泊先として親父を頼ったらしい。
だから叔父は次の日の早朝5時ぐらいには家を出発して仕事へと向かっていった。

あまりにも短く、そこから暫く叔父に会うことがなかったため、あれは幻だったんじゃないのかと一時期思ったぐらいだった。
それから数年後、とある事件が起こった。

叔父が白血病になった日

結果を告げられる

僕が叔父の存在を知ってから数年後、それまで親戚の集まりに顔を出さなかった叔父がたまに顔をだすようになった。
叔父は昔と違ってかなり丸くなったみたいで、よく妹達の遊び相手になっていた。

叔父からしたら、結婚していないし、子供もいないので姪っ子は可愛かったんだと思う。
僕が中学2年生ぐらいの頃、遊びからから帰ってきた僕に親父から「大事な話がある」と急に話を切り出された。

丁度妹達は遊びに行っていて家に居なかったから都合がよかったんだろう。
何か怒られるのだろうかと思っていたら親父から叔父の現在の状態について伝えられた。

兄貴…お前の叔父さんなんだが、白血病になって今入院している。

え!?あ…うん…。

助かるかどうかはわからない。

妹達には伝えないけど、取り敢えずお前にだけは伝えておく。

わかった。

急な出来事でパニックになりかけたが、どうにか落ち着いて返事をしていた。
半分ぐらいは突然のことで白血病の恐ろしさを理解できていなかったんだけど、ただぼんやりと「あんまり助からない病気だよな…」って思いが浮かんだことだけは覚えている。

後から聞いた話なんだけど、親父はこの頃何回か叔父の御見舞に行ってたらしい。
入院した次の週ぐらいにどうにか仕事の都合を付けて叔父の御見舞に行ったら、見慣れない女の人が看護していた。

どうやら、叔父が前々から付き合っていた彼女らしい。
あまりにも献身的で良い人だったから、親父は叔父の彼女に頭を下げて、

どうか、兄貴のことをよろしくお願いします。

と言ったららしく、その人も「わかりました。」と返事をしてくれた。
親父は叔父に彼女がいること自体知らなくて驚いたけど、献身的な彼女に「この人なら」ってのも思ったらしい。

親父が電車から見た景色

虹

それから数日後、親父は名古屋の大きな病院に行っていた。
白血病は骨髄を移植しないと治らない(移植しても治ると限らない)病気で、骨髄は調べて一致する人じゃないと移植ができない。

祖父母は調べたものの一致しなかったらしく、親父は遅れながらも、一致する可能性があるかもしれないから病院で調べてもらうことにした。
名古屋で仕事があったため、仕事の後に大きな病院まで行って検査することにしたらしい。

大きな病院だとはいえ、かなり古い病院だったらしく、診察室が壁ではなく間仕切りカーテンで区切られているようなところだった。
間仕切りカーテンの外側で血液検査のためにきた親父だったのだが、自分の診察の1個前に入っていった人が医者と話している内容が聞こえてきてしまった。

あの~…私はあとどれぐらい生きれるのでしょうか…?

あ~、あと半年ぐらいですね~。

親父は「え?これは俺が聞いていい話なのか?」とかなり困惑したらしい。
生きるか死ぬかの話をしにきた人の次に自分はただの血液検査できてるだけってのがなんとも言えなかったんだとか。

親父は血液検査を行い、結果は後日出ると聞いて、その日は電車に乗って家に帰ってきた。
帰りの道中、電車の窓から外を眺めていたら、なんと二重に掛かる虹を見たらしい。

兄貴はきっと死なないな。

それを見た親父は何の確証も無いけど、自然とこう思った。
親父の想いは的中し、親父の骨髄は一致しなかったが、叔父さんは一致する骨髄を提供してもらって手術し、見事に復活した。

どうも昔からなのだが、親父の家系は生命力が強いらしい。
叔父さんはその数年後、白血病で倒れた時に看病してくれた彼女と結婚をした。

今ではすっかり元気で、正月になると九州の実家に帰ってきては親父や祖父・親戚の人々と食卓を囲んでお酒を飲んでいる。
2年ぐらい前に久々に会ったら、奥さんのほうが疲れた顔をしていたな。